蓄膿症(副鼻腔炎)と体質

  体質論からみる蓄膿症と粘液体質

ここではアーユルヴェーダの各体質をご紹介します。 アーユルヴェーダでは人体は3つの体質(作用)によって構成されると考えます。 
          
3つの体質(「ドーシャ」という)のバランスが整っている時は健康なのですが、食生活や 生活習慣の影響のせいでこのバランスが偏ると、身体に不快な症状やひいては病気を引き起こすことになります。 ここでは、3つの体質の特質を詳しく見ていきたいと思います。            
            
3つの体質は一つは風体質(ヴァータ)、そして熱体質(ピッタ)、粘液体質(カパ)と呼ばれ ます。(*風体質、熱体質、粘液体質はわかりやすくするために敢えて意訳しています。)
            
この3つの体質が、さまざまな機能を統合した一つの人体を作るのは、あたかもテレビが色の3原色である赤・緑・青 から多様な色を作りだし、一つの画像を作るのに似ています。
 
これからお話しする3つの体質は今まで聞いたこともないインドの身体論です。 そのため、きちんと理解するというよりも、イメージ 的にアバウトに、どうもこういうことかな、 という感じで捉えていただいたほうがいいと思います。            
            

【粘液体質】

それでは、まず、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)、鼻づまり・鼻水や花粉症に関係する粘液体質から見ていきます。 粘液体質のイメージは“重たくて粘り気のあるもの”という感じです。

各体質はいくつかの性質をもっています。 粘液体質の質は「重い、粘り、油性、柔らかい、液性、安定、甘味性、冷たい、鈍い」 といったものです。 これだけでは何のことかわかりにくいと思いますが、 取りあえず、粘液体質は “重たくて粘り気のあるもの”というイメージとして捉えてもらえればと思います。
            
これらの質が生理上には次のような機能として現れます。 体重の増加、関節の潤い、スタミナ、味覚・嗅覚などです。
            
粘液体質は心には次のように反映します。            
心が落ち着いた傾向を持ち、穏やかな気質、愛情の豊かさなどです。 また、早く覚えるのは得意ではありませんが、一度覚えるとなかなか忘れません。  そして、物事をゆっくりと深く理解します。行動もゆっくりとしており、歩くのもゆったりとしています。  物を貯めるのが好きです。 物事に粘り強く対応するのも粘液体質の特徴です。 忍耐力があります。
 
この粘液体質が体内に過剰に蓄積されてくると粘液体質に関連した病気が出てきます。
例えば、食事に油(粘液体質の質)をたくさん使うと、分解されなかった油が少しずつ体の中に 蓄積されていって、通常の脂肪の量を越え、やがて肥満体になっていきます。 糖尿病も粘液体質の病気です。 糖分(粘液体質の質)を消化・代謝できる範囲を超え るほど過剰に摂取することによって粘液体質が増し、やがて糖尿病という病気となって現れます。
蓄膿症(慢性副鼻腔炎)、アレルギー性鼻炎や花粉症も体に粘液体質が過剰に溜まったことから起きる症状です。  主な原因は食事が粘性、油性、甘味性、冷性といった粘液体質のものに偏り、それが頭部に集まった結果起こった病気です。            

西洋医学では花粉症は杉やひのきなどの花粉が原因とされています。 しかし、それではなぜ 大人になって、ある年の春から急に花粉に対してアレルギー反応を引き起こすのでしょうか。  それに対してて西洋医学は答えてはくれません。本当の原因はアレルギーを起こす人と起こさない人との 体の違いに隠れているわけですが、その原因こそ粘液体質の過剰蓄積であるのです。 

粘液体質の過剰蓄積による主な病気は、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)、花粉症や鼻づまり・鼻水の他に も喘息、味や臭いがわからない、痛風、高コレステロール血症、関節の痛み、腰痛などがあります。

心理面で粘液体質が過剰になると、心が重くなり、動くのがおっくうになり、さらに引きこもりやうつに 発展することがあります。 また、とても執着心が強くなり、不要な物を捨てるのに時間がかかるようになります。
(* 他のページでは粘液体質のことを単純に「粘液」と表記していますが、これは西洋医学でいう体液としてだけの粘液より  広い意味があります)
                              

【風体質】

風体質のイメージは “軽くて、動いている”感じです。            
風体質にもいくつかの性質があります。 それは「軽い、乾燥、冷たい、粗い、動き」などです。

これらの質が生理上には次のような機能として現れます。 排泄、呼吸、血液の流れ、思考、聴覚・触覚などです。
            
風体質は心には次のように反映します。明るさ、記憶の早さ、早い理解、気分の変わりやすさなどです。
            
風体質と粘液体質には冷たいという共通する質があり、両体質は共に寒さに弱いです。一方で、それ以外は風体質 と粘液体質は相反する質を持っています。
            
さらに風体質の特徴ですが、粘液体質のような安定感が少ないため、気分が変化しやすく、興奮しやすい面があります。  粘液体質のように物事に淡々と粘り強く取り組むよりは、絶え間ない変化を好みます。アイデアを 思いつくのは得意ですが、新しいものに取り組んでも途中で飽きて、次の事を始めようとしたがります。
            
風体質の人は急に友達から食事に誘われても喜んでついていきますが、粘液体質の人は、急に 動くのが苦手ですから、予定が詰まっていたわけでもないのに、「行くのは構わないけど、誘うな ら前もって言って欲しい」などと苦情を言います。 
           
粘液体質は追究心(取り組む姿勢に粘りがある)がありますが、風体質は好奇心が旺盛で広く浅く知りたがります。            
ただ、ここで誤解してほしくないのは、粘液体質質と風体質が反対の質があるからといって、どちらかの 体質に自分や他人を無理に当てはめてはいけないということです。 2つの体質(ドーシャ)をほぼ同じく らいに多く持つタイプの人もいますから、好奇心が旺盛でありながら、同時に一つのことに打ち込める ことのできる方もいます。
 
例えば、テニス、書道、語学、園芸などの多彩な趣味を持ちながら、その内のいくつかは玄人並みの腕前を持つ方などがそうです。
            
この風体質が体内に過剰に蓄積されてくると次のような病気が出てきます。 例えば、体の冷え、 便秘、乾燥肌、高血圧、頭痛、関節炎、リウマチ、慢性疲労、神経性の胃腸障害、耳の痛み、 泌尿生殖器の病気、生理不順、前立腺肥大などがあります。 風体質の病気は主に痛みと麻痺に関係しています。
            
風体質は寒さに最も弱い体質で、冬になると風体質関連の病気が出やすくなります。  冷える(=風体質が過剰になる)と体内のあらゆるものの流れが悪くなりますから、それが腸においては便秘と いう症状として現れます。 便秘を解消するためには流れを悪くした冷えと乾燥というものと 反対の質である、暖かさと潤いという質のものを取ると解消されます。 お白湯は最も手っとり早い便秘の予防策です。
                         
心理面で風体質が過剰になると、過度な不安や心配、悩み、不眠となって現れます。 

粘液体質が過剰になると重い質がさらに重くなって内向的になり、人の意見を受け入れられ なくなりますが、風体質が過剰になった時はその逆で、軽さがさらに軽くなるので、落ち着きがなくなり、 考えがああでもないこうでもないと行ったり来たりし、不安と心配がつのります。   

また、風体質の動き、軽いという質は、落ち着いた粘液体質とは違い、不規則な行動となって現れ、例えば、 いつも寝る時間が定まらず、ついつい夜更かしをしてしまいます。そんな風体質の人に心配ごとが加わると 不眠症になりやすくなるため、風体質の人は普段から習慣を守るように心がけ、 気分や勢いなどに影響されないように自重することが大切です。 
            
風体質は心配性の傾向がり、それが体には胃の働きの悪さとなって現れ、消化不良につながりやすいです。            
                         

【熱体質】

熱体質のイメージは “熱い”という感じです。             
熱体質にもいくつかの性質があります。 それは、熱い、鋭い、液性、流動性、軽度の油性などで す。 これらの質が生理上には次のような機能として現れます。 食物の消化、栄養の吸収、肝臓での 解毒作用、体温、視覚、知性(知識の消化能力)などです。 

熱体質は心には次のように反映します。 鋭い知性、チャレンジ精神、規律的、満足感などです。
            
熱体質が過剰になると、熱性が高まり、次のような病気として現れます。            
胃炎、胃潰瘍、肝炎、結膜炎、咽頭炎、黄疸、湿疹、皮膚のかゆみ、ヘルペス、下痢、痔、頭髪の減少(若はげ)、体の火照り、赤ら顔、視力の減退、口臭・体臭などです。

例えば、アルコールを飲みすぎると肝臓が悪くなるのはよく知られていることですが、これは アルコールという熱性の強いものを取る過ぎることで肝臓の解毒作用をオーバーし、少しづつ肝臓 に熱性が蓄積され、やがて肝炎として発症するわけです(なお、肝炎の原因は他にもウイルス感染があります)。             
熱体質の人は寒さには強いですが、暑さが苦手です。 また、消化力が強いため空腹には耐えられません。

心理面で熱体質が過剰になると、イライラしたり、さらにそれが大きくなると怒りになります。  怒りに火がつくという言葉がありますが、まさに熱体質を端的に表した表現です。心での熱性の 増加は攻撃的、辛辣な表現として現れます。 口がきつい人はたいてい熱体質が増加しています。  穏やかで優しい粘液体質とは対照的です。             
また、時間を気にし過ぎたり、規則に反した人を許せず、自分にも他人にも完璧主義を求めます。 こういう所は不規則な傾向を持つ風体質とは対照的です。 
            
やる気やチャレンジ精神は心臓にある熱体質のせいですが、何かショックなことがあると熱体質が弱く なり、しばらくは何もする気がおきなくなります。